鹿児島県の最北端の町、長島町。長島八景とも称される海沿いの絶景が点在し、美しい花々や造形作品が目を楽しませてくれるなど、ドライブにも最適なエリアです。赤土で育つジャガイモ・サツマイモや、海鮮・柑橘類などのおいしいグルメもたくさん。今回は長島町をぐるっと一周、見て食べて癒される日帰り旅を紹介します。
景勝地|黒之瀬戸大橋
長島町の入り口・黒之瀬戸大橋。日本三大急流に数えられる黒之瀬戸海峡にかかる、阿久根市と長島町を結ぶ全長502メートルの大橋を渡れば、旅が始まります。
橋のたもとには、展望台「うずしおパーク」があり、大橋を一望できます。1~5月には大渦が巻く様子も見ることができ、迫力満点。
2024年で開通50周年を迎える黒之瀬戸大橋は、長島町に大きな経済効果をもたらし、それまでの島民の生活もガラリと変えてくれたそうです。今や全国的にも有名な長島発の芋焼酎「さつま島美人」は、この橋の開通を機に生まれたといっても過言ではありません。
美しい景色を眺めながら、まずは橋を渡った先にある道の駅に向かいます。
黒之瀬戸大橋
ショッピング|黒之瀬戸だんだん市場
長島町の玄関口にある道の駅「黒之瀬戸だんだん市場」。長島町の新鮮な海の幸・山の幸をとりそろえていて、加工品やお惣菜なども充実しています。
ブリやシマアジ、タイなどをいただけるワンコイン地魚寿司は、昼には完売の人気商品。旅の始まりの腹ごしらえにもおすすめです。鮮魚コーナーには生け簀もあり、シマアジやブリ、カンパチ、ヒラメなどが泳いでいて、旬の時期には伊勢海老や萬サバなども人気。さばきたての鮮魚も格安で手に入れることができます。
温州みかんの発祥の地でもある長島町特産の柑橘類は、旬を迎える冬から春にかけて、不知火やサワーポメロ、「柑橘の島」とも呼ばれる獅子島の甘夏をはじめ、10種類近い果実が店頭に並びます。そのほか、島みかんのサイダーやゼリー、スパイスなどの加工品も充実。
郷土菓子の「あか巻き」も人気です。こしあんをカステラ生地とピンク色の求肥で巻いた、しっとりと甘いお菓子で、お土産にもおすすめですよ。
黒之瀬戸だんだん市場
TEL: 0996-65-2222
営業時間:9:00~18:00
定休日:1月1日・2日
グルメ・ショッピング|道の駅長島 ポテトハウス望陽
絶景ポイントがたくさんある海沿いの389号線を北上します。赤土のジャガイモ畑と青い海のコントラストが素敵な汐見の段々畑は、長島らしい景色!
眼下に広がる東シナ海の絶景が圧巻の、「道の駅長島 ポテトハウス望陽」にやって来ました。
物販コーナーでは、長島特産の赤土ばれいしょやサツマイモが人気。ほかにも、冷凍焼き芋や干し芋、チップスやパイなどのスイーツも充実。テイクアウトにもおすすめのご当地アイスは、ジャガイモ、紫芋、島みかんをラインナップ。珍しいジャガイモアイスは、ほんのり甘いジャガイモが練りこまれていて、新感覚のおいしさです。
新鮮な海の幸を味わえる「海鮮味処 魚島」では、特産の養殖ブリなどの刺身やフライなどの定食を、リーズナブルな価格でいただけます。
2階のカフェ「ら・ら・ら・珈琲」は、きれいな空と海の絶景を眺めながら、おいしいスペシャリティコーヒーとスイーツをいただける、とても居心地の良い空間になっています。店主の小﨑彰子さんは、長島への移住を機に、長島のおいしいものを、多くの人にも食べてほしいと開業に至ったそうです。
長島のサツマイモや柑橘を使った期間限定スイーツは、心も体も大満足のおいしさです。この日は、ブリュレやハニーバターソルト、スパイシーチーズなど様々なトッピングで焼き芋をいただける「利き焼き芋プレート」(11~4月頃まで提供)と、「大将季のフルーツサンド」(4~7月頃まで提供)をいただきました。長島の青くて爽やかな風、自然豊かな山々をイメージしたというブレンドコーヒーや、期間限定ドリンクと一緒にどうぞ。
道の駅長島 ポテトハウス望陽
TEL:0996-88-5531
営業時間:9:00~18:00
定休日:1月1日・2日
海鮮味処 魚島
営業時間:10:30~15:00(LO14:00)、17:00~22:00(LO21:00)
ながしま ら・ら・ら珈琲
営業時間:11:00~16:00
長島町の焼酎蔵巡り
5つの蔵で手を取り合って、長島から全国へ!
―長島研醸有限会社ほか―
長島町の焼酎と言えば、「さつま島美人」。鹿児島でも高いシェアを誇り、県民にとっては、J2プロサッカークラブ「鹿児島ユナイテッドFC」のスポンサーとしてもお馴染みです。
5つの蔵元(宮内酒造、宮乃露酒造、長山酒造、杉本酒造、南洲酒造)で原酒を造り、共同瓶詰め会社(長島研醸)で製品化して出荷する協業体制をとっています。黒之瀬戸大橋の開通を7年後に控えた昭和42(1967)年、島外メーカーの進出に立ち向かうため、5社で団結して長島研醸を設立しました。当時は出水エリアでも最小規模の製造量でしたが、長島の特産品として島民からも愛され続け、今では県内外で多くのファンを獲得するまでになりました。
まずは5社のうちの1つ、大正5年創業の杉本酒造を訪れました。長島造形美術展で制作された、一升瓶と紙パックの巨大なモニュメントがお出迎え。案内してくれたのは、30代にして蔵の4代目を務める、杉本真輝さん。長島研醸の取締役でもあります。
杉本酒造では、長島町や南薩、大隅地方のサツマイモを使い、8~2月にかけて芋焼酎の仕込みを行っています。製造は40代を中心に5人の蔵人で担っていて、最盛期には1日8トンも仕込むそうです。それ以外の時期は、設備のメンテナンスに注力。製造レーンがより効率的な動線になるようDIYで改装することもあるそうです。
蔵の隣のショップでは、製造の様子を映像で見ることもできます。「さつま島美人」の歴史や命名の由来、ラベルの変遷にまつわる小ネタなども教えてもらいました。
焼酎造りにおいては、「基本を大切に、長島研醸からのリクエストに安定した酒質で応えていくことを念頭に置いている」と杉本さん。また同時に、「焼酎ならではのお湯割り文化を広めることも、トレンドのお酒を研究することも大切だと思っている」とも。「業界に人数がいないとコアが盛り上がらないと思うので、どんな入り方であっても、焼酎に興味を持ってくれる人が増えてくれたら良いな」と話してくださいました。
店内では銘柄の飲み比べもできます。銘柄選びの参考に、料理とのペアリングチャートも必見です。
杉本酒造の隣には、水神様を祀った龍神宮もありますよ。
続いて訪れたのは、長島研醸です。広報などを担当する総務の中村展明さんに工場を案内いただきました。
工場の中と外には100本の貯蔵タンクがあります。5つの蔵で貯蔵熟成を経た原酒は、定期的にタンクローリーで1日4~5往復して長島研醸まで運ばれるそうです。
ブレンド前の原酒を見せてもらいましたが、それぞれ色や香り、にごり具合などが絶妙に違います。これらの原酒をタンクからタンクへ移動させて、創業当時から変わらない黄金比率でブレンドし、貯蔵熟成しながらガス抜きして、「さつま島美人」などの銘柄を造っています。
地下水で割り水し、1週間後に瓶詰めをして出荷するそう。訪れた日は出荷量の8割を占める紙パック製品の生産が行われていました。機械と人による正確で丁寧な作業により、製品が完成します。
そうしてできた製品は、毎朝全国に出荷されていくそうです。年間の出荷量は250万本にも上ります。瓶詰めされたばかりのフレッシュな製品がスピーディーに私たちの手元に届いていると思うと、嬉しくなりました。
鹿児島ユナイテッドFCのスポンサー活動は、2024年で丸10年を迎えます。試合会場では振る舞い酒の提供も恒例になっていて、全国でも話題になっているとか。「ユナイテッドFCがきっかけで焼酎を飲むようになった」という声もあるそうです。「鹿児島と言えば焼酎。鹿児島らしさがクラブの力になれていると思うと嬉しいです」と中村さん。「焼酎=おやじくさいというイメージを払拭したい。焼酎は薄めや濃いめ、コーラ割りからコーヒー割りまでいろいろな飲み方ができることなどをもっと知ってもらって、これからも愛飲してくださる層の裾野を広げていけたら」と話してくださいました。
景勝地|針尾公園
長島研醸から車で約15分。長島八景にも数えられる針尾公園は、「薩摩松島」の絶景を眺められる展望所です。伊唐島、諸浦島、獅子島などを一望でき、遠くには天草諸島や、天気が良ければ長崎の雲仙普賢岳を望むこともできます。
ガラス張りの空中展望トイレも有名で、開放的な気分を味わえること間違いなし!
針尾公園
TEL:0996-86-1137(長島町水産景観課)
観光・グルメ|長島ブーゲンビリアの丘
道沿いの花壇には花々がきれいに手入れされていたり、毎年春には「夢追い長島花フェスタ」が開催されたりと、花の街としても有名な長島町。冬場の時期でも花を見られるようにと2017年にオープンした「長島ブーゲンビリアの丘」では、ハウスの中で色とりどりの鮮やかなブーゲンビリアを鑑賞することができます。
白や赤、黄、ピンクなど約30種170本ほどの花が咲き誇り、見頃は11~5月頃。1月に満開となります。併設する「花カフェ長島」では、長島産の甘夏ジャムを添えた手作りスイーツが人気。オーガニックコーヒーと一緒に味わってみては。ドリンクはテイクアウトも可。ガーデニングのグッズや植物なども販売しています。
長島ブーゲンビリアの丘
TEL:0996-87-1600(花カフェ長島)
営業時間:9:00~17:00
休園日:毎週水曜
入園料:小・中・高校生200円、一般400円
※本記事の情報は、取材当時のものです。