
悠久の自然とともに紡がれた、岩川の焼酎造り
鹿児島県の東部、大隅半島の中心に位置する曽於市大隅町岩川。この地は、鹿児島三大祭りのひとつ「弥五郎どん祭り」が開催されることでも知られ、さらにマイナスイオンに満ちた「悠久の森」など、豊かな自然も広がっています。
そんな岩川の地に、創業からおよそ150年。まだこの地が岩川村と呼ばれていた頃から、地域とともに歩んできたのが岩川醸造です。創業当時から変わらぬ焼酎造りへの真摯な姿勢によって、こだわりの本格焼酎を造り続けています。
岩川醸造の伝統を今に受け継ぎ、蔵の中心で焼酎造りを行っているのが、杜氏 中田 岳さんです。2013年5月に岩川醸造に赴任し、それ以来製造業務、製造管理業務を担ってきました。関東出身の中田さんは、清酒や焼酎でも甲類のものに馴染みがあったそう。しかし、学生時代に本格焼酎の香りに感銘を受け、本格焼酎に携わる道を選びました。
焼酎造りは、同じ原料を使っていても麹や酵母の状態、外気温、発酵経過によって味わいが簡単に変わります。そのため中田さんは、異なる環境で安定的に製造ができるよう、日々もろみと向き合いながら焼酎造りに取り組んでいます。

仕込みの現場に到着すると、もろみの様子を確認します。デジタル温度計をチェックするだけではなく、タンク内のもろみの状態や香りも確認。その日の状況に合った温度制御を行い、微生物が最適に生活できる環境を作り上げているとのことです。

麹造りから焼酎が完成するまで約3週間。仕上がった焼酎を確認する瞬間について「日々の積み重ねが実を結ぶ蒸留の瞬間は、常に緊張と安堵が入り混じった複雑な心境です」と話してくれた中田さん。一つひとつの工程を積み重ねて生まれる焼酎には、蔵人たちの焼酎への深い思いがたくさん込められています。
蒸留を終えたばかりの焼酎の香りは荒々しく感じますが、この香りを感じられるのも蔵人ならではの醍醐味でもあるのだとか。

地元から全国にファンが広がる、岩川の味
岩川醸造の代表銘柄である「おやっとさあ」を紹介いただきました。この名には、鹿児島弁で一日の労をねぎらう「お疲れさま」という意味が込められています。昨年、発売から30周年を迎えたこの焼酎は、地元はもちろん全国のファンに長年愛されています。

白麴仕込みによって生まれたほのかな芋の香りから、濃厚な本格芋焼酎の味を楽しむことができる「おやっとさあ」。食事とともに、一日の締めくくりにぴったりの一本です。
現在では、「おやっとさあシリーズ」として商品も展開。黒麹仕込みのキリっとした喉越しと甘みが感じられる「おやっとさあ(黒)」。安納芋の濃厚で甘みのある新たな味わいが楽しめる「おやっとさあ 安納芋ブレンド」など、多彩なラインナップが揃います。飲み比べを楽しむのも、素敵な時間です。

岩川醸造を代表する銘柄のひとつ「薩摩 邑」も、同じくファンの多い逸品。常圧蒸留と減圧蒸留の原酒をブレンドし、芋焼酎ならではの風味を感じながらも飲みやすさが特徴の本格芋焼酎です。焼酎初心者の入口の1本としては、水割りがおすすめ。そして焼酎上級者には焼酎の特徴を十分に味わっていただくため、ぜひオンザロックで楽しんでほしいとおすすめいただきました。

「焼き鳥×薩摩 邑」による至福の時間
中田さんのおすすめの肴、それは焼き鳥です。今回ご紹介いただいたのは、岩川醸造から車で15分、曽於市末吉町新町にある「串屋 火の鳥」です。
2023年11月にオープンして以来、地元の常連客を中心ににぎわいを見せています。
店長の桐木平さんが焼く串の数々は絶品。今回はお店のおすすめが揃った「焼き鳥 盛り合わせ」を注文しました。
焼き上がるまで、カウンター越しには桐木平さんの手際よい焼きの技を見ることができます。じゅわっと香ばしい音と匂いが食欲をそそり、串が焼き上がるのがとても待ち遠しい。
香ばしい香りとともにいただいた、焼き鳥の盛り合わせ。豚バラやももの定番から、トマト巻、レタス巻などの野菜巻きまで、幅広い種類の串が揃っていました。今回一緒に合わせるのは「薩摩 邑」です。中田さんのおすすめはロックですが、もちろん水割りやお湯割りでも好みに合わせて楽しんでほしいとのこと。
串の中でも豚バラ肉との相性は抜群。豚バラ肉の脂の旨味とジューシーさは、「薩摩 邑」のすっきりとした香りとほのかな甘みがバランスよく調和します。さつまいも由来の風味が豚肉の脂と一緒に口の中で広がり、互いに引き立て合う感覚を楽しめます。

桐木平さんの丹精こもった焼き鳥と、岩川醸造の最高の一杯が織りなす絶妙なペアリング。一日の終わりに癒してくれるこの時間をぜひ体験してみてください。
岩川醸造株式会社
電話:099-482-1151
串屋 火の鳥
電話:0986-36-8955
[営業時間]18:00~23:00
[定休日]月曜
※本記事の情報は、取材当時のものです。