家族でもてなす、アットホームな霧島の名店
花は霧島~煙草は国分~燃えて上がるは~桜島♪
鹿児島おはら節の歌い出しに登場する、霧島市国分。鹿児島空港から車で20分、県で2番目に人口の多い都市であり、また、南は桜島を眺める錦江湾の海岸線、北は霧島連山と豊かな自然にも恵まれ、住みやすい街の1つになっています。
JR国分駅から徒歩15分、飲食店や商業施設が建ち並ぶ中心市街地の一角、閑静なエリアに店を構えるのが、郷土料理や居酒屋料理の店・辰巳屋です。季節を感じる木々や花々がきれいに手入れされた店構え。店主の猪目良行さんの息子で、二代目となる岳洋さんが迎えてくれました。
辰巳屋は、岳洋さんの父・良行さんが35歳の時に始めた居酒屋で、以来30年以上、県内外からの客人を、おいしく美しい料理の数々でもてなしてきました。10年ほど前から、良行さんの背中を見て修行を積んできた岳洋さんも加わり、現在は家族4人で店を切り盛りしています。
登山が大の趣味という良行さん。店内には、これまで踏破してきた山々の写真が飾られ、得意な地理・歴史の話でも来店客を楽しませてくれます。霧島連山などの美しい風景写真を見ながら、落ち着いた空間で四季折々の料理を楽しむことができますよ。
うまい水で仕込む、個性豊かな霧島の焼酎たち
鹿児島の北西部に位置する伊佐市から、姶良市、霧島市にかけて13もの酒蔵が点在する加治木エリア。辰巳屋では、丁寧な造りにこだわる小さな蔵元の焼酎を中心に、定番の銘柄から珍しい銘柄まで豊富にそろえています。
地元の霧島からは、国分酒造、中村酒造場、万膳酒造、日當山醸造の4蔵をそろえます。せっかく霧島市に来たのであれば、水と空気がきれいな霧島市で造られる焼酎を、料理に合わせて飲み比べてみるのがおすすめです。霧島山系の伏流水など、良質な地下水を仕込みや割り水に使っているので、まろやかな味わいを楽しめます。
「日本酒も良いですが、焼酎はまた違う魅力があって、こだわればこだわるほど、味に個性が出る、そこが良いですよね」と岳洋さん。店では、銘柄の説明を入れたメニューブックも準備していますが、季節限定酒などもそろえているので、ぜひ料理に合わせておすすめを聞いてみてください。
上品で味わい深い、美酒と美食の饗宴
良行さんにおすすめをお願いしました。まずいただいたのは、焼き物4種(黒豚の味噌漬け、鶏の網焼き、カツオの腹皮、キビナゴの塩焼き)。どれも鹿児島ならではの食材を丁寧に焼き上げた逸品で、噛むほどに旨みが出てきます。鶏は、朝びきの新鮮な霧島産鶏を使用。
西郷隆盛公もよく訪れたと言われる歴史ある温泉地・日当山の温泉水で仕込んだ日當山酒造の「千の華」を合わせます。まろやかで丸みのある味わいは、お湯割りで華やかな香りがさらに花開きます。
錦江湾から水揚げされる姫甘海老のかき揚げには、中村酒造場の「なかむら」をロックでどうぞ。カラッと揚がったかき揚げは、姫甘海老の濃厚な香りと甘さが口いっぱいに広がるおいしさで、そこに伝統の製法で丁寧に甕仕込みされた「なかむら」の上品な香りと味わいを重ねると、余韻も含めてなお美味に感じます。
3品目にいただいたのは、夏野菜・ニガウリと豆腐の味噌炒め。ナスやヘチマはトロっと柔らかく、少し甘めの味噌ダレが豚肉や豆腐に絡んで、お酒が進む一皿になっています。万膳酒造の「萬膳庵」を炭酸割でさっぱりと合わせるのはいかがでしょう。
麹米は秋田県産ひとめぼれ、サツマイモは鹿児島県産の黄金千貫、麹菌は秋田今野の吟香黄麹、そして仕込み水は霧島のレッカ水(超軟水)を使い、かめ壺仕込み、木樽蒸留で丁寧に手造りされた酒質は、やわらかくて華やか。どんな料理にも合うように、と名付けられた銘柄名の通り、おかわりしたくなるほど、食事もお酒も進みます。
最後にいただいたのは、辰巳屋名物・太刀魚のぎょうざ。ぎょうざのタネを太刀魚と大葉で巻いて揚げた一品で、外はサクッと、中はふわふわの食感とジューシーな味わいがたまりません!国分酒造の代表銘柄「さつま国分」を、岳洋さんおすすめのお茶割りでいただきました。すっきりとした甘さの白麹仕込み焼酎を、きりっと冷えた甘いかごしま茶で割った緑茶ハイは、香りが良く飲みやすいため、こちらもすぐにグラスが空いてしまいそう。
「人を連れていきたくなる店を目指して、鹿児島らしいものでおもてなしができれば」と話す良行さん。家族の仲の良さも伝わってくるアットホームな雰囲気が、今日も客人の心とお腹を満たしてくれます。
辰巳屋
電話:0995-46-9726
営業時間:17:30~23:00
定休日:日曜